卓球トップ選手が取り入れている五感トレーニング

東京五輪・卓球混合ダブルスで見事に優勝し金メダルを獲得した水谷隼選手、伊藤美誠選手、おめでとうございます!

試合を観ておられた多くの方々が、「あのスピードの中で、あの判断と反応は信じられない!?」と感じておられたと思います。
私もそのひとりですが、一方であのスピードでの判断・反応を可能にするためのトレーニングに関わらせていただいてきたので、「やっぱりあのトレーニングが卓球競技者の方々に必要とされたのは必然だった」とも思うのです。

本日は、このブログでも過去に紹介をさせていただいた、私たちがアスリートに実施させていただいている五感強化トレーニングの一部を一部編集の上で再掲します。

※下の画像をご覧いただいた上で、以下お目通しください。

これは、

「五感研修(視覚の分解能を高めるための研修)」

で使うツールの一つです。

(※「分解能」という言葉の解説は、今日は割愛させてください。それだけでもかなり長いので…)

「真っ白(#FFFFFF)」から「真っ黒(#000000)」までがグラデーションに並んでいる20枚の色見本のうち、肌色に抜けている2箇所の色を予想し、別の専用用紙に鉛筆や消しゴムを使って再現する、というプログラムになっています。

簡単と思われるかもしれませんが、これが実は非常に難しいのです。

難しい理由はシンプルです。

理由)見たことがないものは、再現(アウトプット)できないのが人間の特性だから、

です。

・この色見本がグラデーションであることはわかる。
・肌色のところに入るのが、前後の中間色になることもわかる。
・でも、その「中間色」を見たことがないので、再現(アウトプット)できない。

のです。

よく、「人間が夢に見ることができることは、必ず実現できる」という言葉を見聞きします。
この研修は、その裏返しなのです。

人間は、見たことのないものは、灰色一つ表現できないということです。

卓球のトップ選手のバックハンドを見たことがある人は、その打ち方を真似することができますし、競技経験者であればそのスピードやキレを生み出すポイント(自分との違い)がどこにあるのかを、瞬時にいくつか発見できるでしょう。

そして、同じくそのバックハンドを間近で、音まで聞くことができれば、踏み込んだ足が出す音、打球音、なんの音かもわからないけどそこに間違いなく存在している自分とは異なるかすかな音、などをも情報として得ることができます。

もし、その選手の使用直後のラケットに触れることができれば、その湿り気や汚れのつき方から、握り方の工夫や力がどこにかかっているのかがわかるかもしれないですし、直に利き手に触れることができれば、得られる情報はさらに多いはずです。

私自身、
「10秒フラットで走る日本トップのスプリンターが地面を踏みつける音」
「日本トップの男子フィギュアスケーターが4回転ジャンプを飛び着氷するときの音」
「世界ランキングトップ10のテニス選手の打球音」

など、目の当たりにして初めて理解できることもありました。


アスリートのパフォーマンス(タイムやプレーなど、競技活動のプロセスや成果といった”アウトプット”のことです)は、ざくっと以下のような計算式で表現できます。

(a)インプットの量/質/早さ
×
(b)身体能力と競技技術

(c)アスリートのパフォーマンス


(a)には、馴染みのない方も多いと思います。
これは競技に必要な五感の能力のことなのですが、もう少し言葉で表現するならば、

▼(b)は、脳が筋肉に指令を出すことによって行われる活動ですよね。

▼では、脳は何をきっかけに、何を根拠に筋肉に指令を出すのですか?
それは(a)外部から五感を通じて取り入れた情報に基づいてですよね。

▼であれば、外部から五感を通じて情報を得る際の、

「その情報の量の、多い/少ない」
「その情報の質の、良い/悪い」
「その情報を脳が神経に伝達する速度の、早い/遅い」

が、脳からの指示や、その指示に基づく筋肉の活動に影響を与えることは必然ですよね?
ということです。

にも関わらず、多くの指導者もアスリート本人も、

(b)しか鍛えようとしていない。

指導者もアスリート本人も、目的は(c)の向上であるはずです。

もし、「いや(b)の向上こそが目的である!」とおっしゃるのであれば、このブログはあなたには価値のないものだと思います。

私とは根本的に考えが違う。

これは、

① 算数・掛け算を理解できる方であり、
② 自身の目的は(c)であると考えている方

であれば、「確かにその通り」と同意していただけると思います。

だとすれば、次の私の質問はこうなります。

「なぜ、(b)のトレーニング “だけ” を行うのですか?」
「なぜ、(a)のトレーニングは行わないのですか?」

(a)×(b)=(c)の計算式で、
(c)の数値を最大化したいのであれば、

その方法は(b)の数値を高めるだけではなく、

(a)の数値を高めることでも、等しく貢献します。
「等しく貢献する」にも関わらず、(b)だけをやる意味はどこにありますか?

なぜそこまで頑なに(a)に手をつけないのですか?

そこに、あなたの先入観はありませんか?
そこに、あなたの逃げはありませんか?
汗をかけば、強くなると思ってはいませんか?
肩で息をすれば、強くなると思ってはいませんか?

あなたのいまのアプローチ以外に、本当に道はないのですか?
今のままの毎日で、あなたは本当に教え子をライバルの上に、前に、送ることができますか?

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