競争ルールを自ら変えることで、弱者は強者に勝ることができる

競技それぞれのルールを正しく理解して、その範囲の中で相手に勝ることがスポーツにおける「勝利」というものであると考えます。

そこまでは、ほとんどの指導者やアスリートも理解しているのですが、そのルールの中には、実は「変えられないルール」と「変えることができるルール(先入観により自らを自らで縛ってしまっていることにより生じるものであり、自分で勝手に”その方法しか許されていない”と思い込んでしまっていること)」があります。

例えば、私が競技経験を持つテニス。速いボールを相手コートに叩きつけるゲームだと考えている(もしくは、端から見ているとそうとしか思えないようなプレーをしている)人が案外多いことに驚きます。

テニスは、「(大雑把に言えば)相手コートに2バウンドさせる」とポイントが得られるというルールです。
その「2バウンド」を得るための1つの方法が、「速いボール」です。
もちろん、現在のテニスにおいて「速いボール」が非常に有効であることに異存はありません。

しかしながら、「それがすべてなのだ!」という人がいたならば、私は賛成しかねます。なぜならば、「相手コートに2バウンドさせる」ための方法は、決して「速いボール」という1つの方法ではないからです。

その前提に立って考えてみると、いくつか道筋が見えてきます。

「速いボール」とは、「球速」のことなのだろうか?
いや、相手が追いつけない速さのボール、と定義できるのであれば、大事なのは「球速」ではなく、自分の打点から相手コートで1バウンド目をするまでの時間が短いことなのではないか?

だとすれば、テニスにおいて重要なのは、自分のポジションの上げ・下げをいかに的確に行うか、なのではないか?

多くのスポーツ指導者は、選手の育成に際して「身体能力」「競技技術」「メンタル力」の3つに絞って指導されているように、私は感じています。

確かにこの3要素は、アスリートの成長や勝利に与える影響が非常に大きい重要なものであることは否定しません。

しかしながら、それだけですべてなのか?と言えば、私はそうではないと思っているのです。

ここから本題に入ります。
以下の図で表している、「競技者A」と「競技者B」の能力。
面積で比べると「競技者A」が大きいので、選手の力量として、「競技者A」の方が”強い(=勝利する可能性が高い)”と言えます。

その時、多くの「競技者B」の立場の選手や指導者は、この3つの能力で「競技者A」にどう追いつき、どう追い越すかを考えがちです。

ですが、当然ながら「競技者A」もさらなる高みを目指して大いに努力をしていますので、なかなかこの差が縮まりません。

その時に、考え方を変えて、勝利に通じる新たな要素であり、「競技者A」を超える可能性が高いものを見つけ出し、そこを強化することによって「競技者A」を上回ることを目指すのです。

今は、「知識力」と「思考・工夫力」を例にグラフを書きましたが、ここは無限に選択肢が存在できます。

身体能力を「瞬発力」と「持久力」に分解して、相手に勝る可能性が高い方をより強化して、その強化したポイントを最大限有効に活用するためのゲーム・メイクを行うことも可能でしょう。

あなたより強い人を打ち負かすには、相手の土俵で戦っていては時間がどれだけあってもかないません。

日々の練習を、本番の試合を、どれだけ自分に有利にマネジメントするか…それがとても大切なことなのです。

そのためには、

1)思考する力
2)関連しそうな知識や情報の量

が絶対に欠かせません。
このどちらが欠けても、頭脳戦に持ち込むことができないからです。

選手の現状を正しく理解し、
役に立ちそうな情報をふんだんに収集し、
それらを踏まえて、深く思考する。

それが、これからの指導者に求められる重要なことなのです。

アスリート研修の専門家
株式会社ホープス 代表 坂井伸一郎
ホープス アスリート人材育成事業

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