様々なアスリートを指導する立場におられる、指導者や親御さんへ
新人選手座学研修の最終回を迎えた某球団があります。
最後の1コマを担当する私は、「漫画 君たちはどう生きるか」を、新人選手1人1人にプレゼントすることにしました。
あまりにも有名で、ましてや今は漫画としてもベストセラーになっているこの一冊。
社会人としての第一歩を、いきなり実力勝負のプロフェッショナルの世界に踏み出す彼らに対して、「選ぶ理由」は山ほどあります。
ですが、今回この某球団の新人選手に「この一冊!」と決めたのには、明確な理由があります。
この球団は、2018年から新監督が就任されます。
当然ながらヘッドコーチなどチーム首脳陣の人事も大きく動きました。
アスリート向けの座学研修を行う際、私が肝に命じていることがあります。
それは、「研修設計者であり、講師も務める私が、受講生に対して”君たちはこれを学ぶべき”と思うことを教える」ことは大きな間違いである、ということです。
つまり、
私が教えたいことや、
私が”受講生たちよ、これを学ぶべきだ”と考えること、
を教える座学研修ではダメだということです。
あたりまえだ、と同意をいただけますでしょうか。
どんな競技であれ、チームや監督、選手個々人によって、必要なことは異なるし、求めていることも様々です。
そこに、私が先生然として、「これが今大切!これを学びましょう!」と一方的に押し付けるのでは、短期的なビジネスにはなっても、中長期的な組織や人材の育成にはならないと考えるからです。
では、何をするのかというと、できることはシンプルで、
1)事前の情報収集
2)研修開始後の継続的な追加情報の収集
3)それらを反映したカリキュラム設計
4)1)2)を細部にしっかりとちりばめながらの研修進行
です。
可能な限り、様々な角度から情報を収集し、そして、そこに浮き出てくるニーズや課題に即した研修カリキュラム設計を行い、それをしっかりとチームの指導者型と共有をしながら、丁寧に選手たちに伝えていくのです。
この球団の場合ですと、
・新監督と昨年末に1度お食事をご一緒させていただき、監督のお考えやポリシー、人生観などを3時間にわたって伺いました。
・研修の責任者とも言えるファームディレクターには、お会いするごとに不明点や疑問点、球団の歴史や育成方針について質問をしています。
・研修実務のご担当者様とは、何度も何度も電話でも、食事でも、メールやSNSのメッセージでも、数え切れないほどやり取りを繰り返しています。
そのようなことを積み重ねて、2018年監督・コーチ新体制の中核的キーワードだと、私が感じたもののひとつが以下のことです。
【失敗を認めろ。
失敗を認めるから、初めて成長できる。
言い訳を繰り返しているうちは、
同じことを繰り返すだけだ。】
これは、まぎれもなく、「君たちはどう生きるか」の中核メッセージの1つです。
このメッセージを伝えるだけであれば、他にも選ぶべき本はあったかもしれません。
でも、彼ら「プロ野球選手」という職業は、同書の中で問われている「己は、社会の分子のつながりの中で、何を生み出しているのか?」という2つ目の中核メッセージを考え続けるべき存在であるとも思いました。
他にも、この本を選んだ理由としては、
「いま何が流行しているか?に敏感な感度を持った大人になってほしい」
「読書から遠い人生を歩んできた彼らに、恥じることなく手に取れる漫画である点が適している」
などきりがありません。
私がこの本(文庫の方)を初めて読んだのは中学3年生の時でした。
中学の夏休みの宿題か何かであったような記憶があります。
そして、3年前。当時小学6年生であった娘の、読書感想文の課題図書として再び読み直しました。
娘と二人で、1ページ1ページ、1語1語を読み、互いに意見や気持ちを交換し合いながらじっくりと読み進めました。
(蛇足ですが、その際に娘が書いた「読書感想文は」、学校を代表し、地元の自治体で優秀賞をいただきました。)
その際に、私も娘も大きな学びとして得たのは(これが3つ目の中核メッセージだと私は思うのですが)、
【”必ず”というある種の保障があってようやく動き出す人間ではなく、行うべきことを勇気をもって行える人間になろう】
ということでした。
彼らが、私が贈るこの本を読むのか、読まないのか。
読んだとして何を感じるのか。
感じたとして、どのような意識の変化につながるのか。
その意識の変化は、行動としてどう現れてくるのか。
それはわかりません。
ですが、私が今回のタスクの中で、最後に彼らのために行えることとしての、精一杯はやりたいし、心の底から彼らの成功を願っています。
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